実践コラム 全30回

事業承継 完全解説
プロが教える承継の「本質」

新事業承継税制から生命保険・信託・M&Aまで、多様な対策を30回の連載で徹底解説。
経営者とその後継者に、自社に最適な「オーダーメイドの承継」を実現するための知識を届けます。

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はじめに

全30回の連載を始めるにあたって

事業承継における税金・相続対策のトータルプランを徹底解説します

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日本企業の99%を占める中小企業にとって、事業承継は従業員の幸福と社会の安定を守るための最重要課題です。

本日から、事業承継における税金・相続対策のトータルプランを全30回で徹底解説します。


🔹前編(第1〜10回):新事業承継税制(特例措置)の光と影

贈与税・相続税を10割猶予する強力な仕組みと、一度踏み出すと「後戻りが難しい」維持管理のリスクや打ち切り事由を深掘りします。


🔹後編(第11〜30回):税制に縛られない「柔軟な」承継戦略

生命保険、信託、金庫株、M&A、MBOなど、経営の自由度を保ちながら「会社の未来」を守る多様なツールを実務に即して紹介します。


単なる節税ではなく、経営者と後継者のベクトルを合わせ、会社の「継栄」を目指すための指針をお届けします。

承継のタイムリミットは刻一刻と迫っています。後継者への最高のバトンタッチのために、ぜひフォローして連載をご覧ください。

日本企業の99%を占める中小企業にとって、事業承継は従業員の幸福と社会の安定を守るための最重要課題です。本日から、事業承継における税金・相続対策のトータルプランを全30回で徹底解説します。

全国の中小企業経営者の平均年齢は年々上昇し、後継者不在のまま廃業に追い込まれる「黒字廃業」が急増しています。帝国データバンクの調査によると、中小企業の約65%が後継者不在と回答。優れた技術・ノウハウ・顧客を持ちながら、次の担い手がいないという理由だけで、年間6万社以上が廃業しているという現実があります。

この連載は、前編と後編の二部構成でお届けします。

📘 前編(第1〜10回):新事業承継税制(特例措置)の光と影

  • 贈与税・相続税を10割猶予する強力な仕組みを徹底解説
  • 「後戻りが難しい」維持管理のリスクや打ち切り事由を深掘り
  • どんな会社に向いているか、どんな会社には向かないかを明確化

📗 後編(第11〜30回):税制に縛られない「柔軟な」承継戦略

  • 生命保険、信託、金庫株、M&A、MBOなど多様なツールを実務解説
  • 経営の自由度を保ちながら「会社の未来」を守る戦略を紹介
  • 経営者と後継者のベクトルを合わせ、「継栄」を目指す指針

単なる節税ではなく、経営者と後継者のベクトルを合わせ、会社の「継栄」を目指すための指針をお届けします。承継のタイムリミットは刻一刻と迫っています。後継者への最高のバトンタッチのために、ぜひ全30回の連載をご覧ください。

lightbulb この連載の目的:税金という「点」ではなく、経営・家族・資産の「三位一体」でトータルプランを考えること。それが事業承継の本質です。
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前編

新事業承継税制(特例措置)を活用した承継

第1回〜第10回 | 100%猶予の仕組みと注意点を徹底解説

10記事
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第1回:100%猶予の衝撃、新事業承継税制とは


事業承継において最大の懸念は、自社株の承継に伴う多額の税金です。2018年に創設された「新事業承継税制(特例措置)」は、後継者が取得した株式に係る贈与税・相続税を「100%猶予」する非常に強力な制度です。従来の一般措置では猶予割合が8割でしたが、特例措置では全額となり、実質的にキャッシュアウトなしで株式を承継できるようになりました。ただし、この制度はあくまで「猶予」であり「免除」ではありません。将来、一定の事由が生じれば納税義務が発生する点に注意が必要です。まずはこの強力なカードの存在を正しく知ることから始めましょう。

事業承継において最大の懸念は、自社株の承継に伴う多額の税金です。2018年に創設された「新事業承継税制(特例措置)」は、後継者が取得した株式に係る贈与税・相続税を「100%猶予」する非常に強力な制度です。従来の一般措置では猶予割合が8割でしたが、特例措置では全額となり、実質的にキャッシュアウトなしで株式を承継できるようになりました。

ただし、この制度はあくまで「猶予」であり「免除」ではありません。将来、一定の事由が生じれば納税義務が発生する点に注意が必要です。まずはこの強力なカードの存在を正しく知ることから始めましょう。

制度の概要:何がどれだけ猶予されるのか

具体的には、後継者が先代経営者から自社株式を贈与または相続で取得した場合、その株式にかかる贈与税・相続税の「全額」が猶予されます。例えば、株価評価が5億円の自社株を息子に贈与した場合、通常なら約2億円超の贈与税が発生しますが、特例措置を使えばこの税金を一時的に払わなくて済みます。

【事例】製造業A社の場合

従業員80名の金属加工会社を経営するA社長(65歳)は、長男(38歳)への承継を検討していました。自社株の評価額は約4億円。一般措置では約1.3億円の税負担が残るため、後継者は銀行借入で対応するしかない状況でした。特例措置の活用後、この税負担はゼロ(猶予)となり、後継者は借入を抱えることなく、手元資金を設備投資に充てることができました。

lightbulb ポイント:「猶予」と「免除」は異なる。将来の確定事由に備えた管理体制の構築が不可欠。制度の恩恵を受けるためにも、まずは正確な理解から始めましょう。
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第2回:一般措置との決定的な違い


「以前からある制度と何が違うのか」という質問をよく頂きます。決定的な違いは「猶予割合」と「対象株数」です。特例措置では発行済株式の「全株」が対象となり、納税額の「10割」が猶予されます。一般措置では3分の2が上限、かつ8割猶予であったため、自己負担が残る構造でした。さらに、雇用維持要件についても特例措置では弾力化されており、5年平均で8割を維持できなくても、理由を報告すれば猶予が継続されます。この緩和により、以前は敬遠していた経営者にとっても検討の価値が非常に高まっています。

「以前からある制度と何が違うのか」という質問をよく頂きます。決定的な違いは「猶予割合」と「対象株数」です。特例措置では発行済株式の「全株」が対象となり、納税額の「10割」が猶予されます。一般措置では3分の2が上限、かつ8割猶予であったため、自己負担が残る構造でした。

さらに、雇用維持要件についても特例措置では弾力化されており、5年平均で8割を維持できなくても、理由を報告すれば猶予が継続されます。この緩和により、以前は敬遠していた経営者にとっても検討の価値が非常に高まっています。

一般措置

対象:発行済株式の2/3

猶予:80%

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特例措置

対象:発行済株式の全株

猶予:100%

【試算例】違いを数字で見てみよう

株価評価3億円、法定相続人3名の場合で比較します。一般措置では、対象株式2億円(3分の2)のうち8割猶予なので、約4,800万円の税負担が残ります。しかし特例措置なら全株・全額猶予のため、納税負担はゼロ。残りの2割・3分の1分の税金もかかりません。この差は経営の「余力」として大きく効いてきます。

特例措置の主な拡充点

  • 対象株数:2/3上限 → 全株に拡大
  • 猶予割合:80% → 100%に拡大
  • 対象後継者:1名のみ → 最大3名まで
  • 雇用維持要件:厳格 → 弾力化(報告で継続可)
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第3回:特例承継計画の提出期限に注意


新事業承継税制を適用するには、まず「特例承継計画」を策定し、都道府県知事に提出して確認を受ける必要があります。当初、この計画の提出期限は2023年3月まででしたが、近年の税制改正により、現在法人版では「2027年(令和9年)9月30日」まで延長されています。この期限を一日でも過ぎると、100%猶予の特例措置は受けられません。2027年の適用期限に向けて、逆算した準備が不可欠です。本制度の適用を少しでも検討されているなら、まずは計画の提出を最優先しましょう。

新事業承継税制を適用するには、まず「特例承継計画」を策定し、都道府県知事に提出して確認を受ける必要があります。当初、この計画の提出期限は2023年3月まででしたが、近年の税制改正により、現在法人版では「2027年(令和9年)9月30日」まで延長されています。

この期限を一日でも過ぎると、100%猶予の特例措置は受けられません。2027年の適用期限に向けて、逆算した準備が不可欠です。本制度の適用を少しでも検討されているなら、まずは計画の提出を最優先しましょう。

特例承継計画に記載すること

計画書には①会社の現状、②後継者の氏名、③承継時における経営の見通し(5年間の事業計画)などを記載します。計画書の作成には「認定経営革新等支援機関」(認定支援機関)の指導・助言を受け、その確認印が必要です。認定支援機関とは、税理士、公認会計士、金融機関などが該当します。

【事例】提出を先延ばしにして後悔した会社

「まだ時間がある」と考えていたB社長は、計画提出を毎年先延ばしにしていました。ところが突然の入院。退院後に急いで準備しようとしたところ、認定支援機関の税理士との日程調整、書類準備に2か月かかり、ギリギリで提出できた経験から「もっと早く動けばよかった」と振り返っています。計画提出はいつでもできますが、準備には時間がかかります。

warning 重要:特例承継計画の提出期限は2027年(令和9年)9月30日。この期限は絶対に逃せません。まず計画提出を最優先行動にしましょう。
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第4回:納税猶予が「打ち切り」になる事由とは


本制度は強力ですが、適用後に納税猶予が打ち切られる「確定事由」に該当すると、猶予されていた税金と利子税を一括納付しなければなりません。主な打ち切り事由には、後継者が代表権を返上する、猶予対象の株式を譲渡する、あるいは3年に一度の「継続届出書」の提出を忘れるといったことが挙げられます。特に事務的なミスによる打ち切りは最も避けるべき失敗です。適用後は、専門家との定期的なモニタリング体制を構築し、要件から外れないよう厳格な管理を続ける覚悟が必要です。

本制度は強力ですが、適用後に納税猶予が打ち切られる「確定事由」に該当すると、猶予されていた税金と利子税を一括納付しなければなりません。主な打ち切り事由には、後継者が代表権を返上する、猶予対象の株式を譲渡する、あるいは3年に一度の「継続届出書」の提出を忘れるといったことが挙げられます。

特に事務的なミスによる打ち切りは最も避けるべき失敗です。適用後は、専門家との定期的なモニタリング体制を構築し、要件から外れないよう厳格な管理を続ける覚悟が必要です。

主な打ち切り事由(確定事由)

  • 後継者が代表権を失った(辞任・解任)
  • 猶予対象株式の一部または全部を譲渡・贈与した
  • 会社が資産管理会社に該当することになった
  • 3年に1度の継続届出書の提出を忘れた
  • 年次報告書(5年間)の提出を怠った

【事例】継続届出書の提出忘れで大惨事に

特例措置を適用して10年が経過したC社。経営は順調でしたが、顧問税理士が交代した際に引き継ぎが不十分で、3年に1度の継続届出書の提出期限を失念。気づいたときには既に数か月が経過しており、猶予税額数千万円と数年分の利子税が一括で確定してしまいました。「手続きのミス」という理由は一切考慮されません。

warning 要注意:3年に1度の継続届出書の提出忘れは即打ち切り。専門家とのカレンダー管理、複数名でのダブルチェック体制を今すぐ構築しましょう。
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第5回 事業承継税制の落とし穴:継がない兄弟の税金が跳ね上がるリスク


自社株の納税が10割猶予されても、自社株が「相続財産」に含まれる事実に変わりはありません。累進税率の仕組み上、高額な株式が加算されることで、遺産総額が膨らみ、他の資産にかかる税率も最高55%まで引き上げられてしまうのです。


ある事例では、自宅を継いだ長女の相続税が、兄が相続した自社株の影響で急増しました。長女は納税資金が足りず、窮地に追い込まれました。


「後継者は無税、非後継者は増税」という不公平感は、深刻な親族間の紛争(争族)を招きます。特例措置の利用には、生命保険を活用した納税資金の確保や代償金の準備など、家族全員のバランスを考えたトータルプランが不可欠です。

自社株の納税が10割猶予されても、自社株が「相続財産」に含まれる事実に変わりはありません。累進税率の仕組み上、高額な株式が加算されることで、遺産総額が膨らみ、他の資産にかかる税率も最高55%まで引き上げられてしまうのです。

「後継者は無税、非後継者は増税」という不公平感は、深刻な親族間の紛争(争族)を招きます。特例措置の利用には、生命保険を活用した納税資金の確保や代償金の準備など、家族全員のバランスを考えたトータルプランが不可欠です。

【具体的事例】長女の自宅が危機に

D家の相続では、長男(後継者)が自社株4億円を特例措置で取得。自宅を継いだ長女の相続財産は自宅3,000万円のみでしたが、遺産総額に自社株4億円が加算されたため、課税される相続税率が引き上げられ、長女の相続税は約800万円に。長女は現金を持っておらず、自宅を売却するか否かの瀬戸際に追い込まれました。

兄が「株は猶予だから実際は払ってない」という事実に長女は憤慨し、兄妹の関係が修復不可能なほど悪化。これが典型的な「争族」です。

warning 対策が必須:特例措置を使う場合は必ず「家族全員の相続税シミュレーション」を実施し、非後継者への納税資金を生命保険や代償分割で準備しておきましょう。
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第6回:失敗事例に学ぶ「未適用」のリスク


制度を知りながらも、あえて適用を見送った結果、後継者に多額の負担が残る失敗例もあります。ある企業では、顧問税理士が管理負担の重さ(5年間の年次報告やその後の継続届出)を嫌がり、制度利用に難色を示しました。経営者もその言葉に従い、特例を適用せずに承継を進めた結果、後継者は数億円の相続税を背負うことになりました。専門家の「やりやすさ」ではなく、自社と後継者の「未来」にとってどちらが最善かを基準に判断しなければ、取り返しのつかない負担を強いることになります。

制度を知りながらも、あえて適用を見送った結果、後継者に多額の負担が残る失敗例があります。ある企業では、顧問税理士が管理負担の重さ(5年間の年次報告やその後の継続届出)を嫌がり、制度利用に難色を示しました。

経営者もその言葉に従い、特例を適用せずに承継を進めた結果、後継者は数億円の相続税を背負うことになりました。専門家の「やりやすさ」ではなく、自社と後継者の「未来」にとってどちらが最善かを基準に判断しなければ、取り返しのつかない負担を強いることになります。

「やらない理由」を整理する

専門家が制度利用を嫌がる理由は多くの場合、①届出・報告業務の増加、②万一打ち切り時の責任問題、③不慣れな制度への不安です。しかしこれはあくまで専門家側の事情。経営者として「後継者に何億円もの借金を背負わせてよいか」という問いを、専門家交代を含めて真剣に考えましょう。

lightbulb 教訓:専門家選びの基準は「自社の未来」。管理が面倒という理由で最適策を諦めないこと。必要であれば事業承継に強い専門家への変更を検討してください。
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第7回:M&Aへの転換が難しくなる「足かせ」リスク


新事業承継税制を適用して株式を贈与したものの、後にそれが「足かせ」になるケースがあります。後継者が親族内承継を断念し、第三者へのM&Aを希望した場合、株式を譲渡した時点で納税猶予が打ち切られ、多額の納税が発生します。猶予税額が会社の売却価格を上回ってしまうと、実質的にM&Aの決断ができなくなります。制度を適用する前に、後継者の将来像や経営能力を冷静に評価し、「本当にこのまま親族内で10年以上経営を続けるのか」をヒアリングしておくことが重要です。

新事業承継税制を適用して株式を贈与したものの、後にそれが「足かせ」になるケースがあります。後継者が親族内承継を断念し、第三者へのM&Aを希望した場合、株式を譲渡した時点で納税猶予が打ち切られ、多額の納税が発生します。猶予税額が会社の売却価格を上回ってしまうと、実質的にM&Aの決断ができなくなります。

制度を適用する前に、後継者の将来像や経営能力を冷静に評価し、「本当にこのまま親族内で10年以上経営を続けるのか」をヒアリングしておくことが重要です。

【事例】M&Aを選べなくなった後継者

特例措置で父から3億円の自社株を引き継いだE氏。承継から5年後、大手企業から5億円でのM&A提案が来ました。しかし猶予されていた税額は1.2億円。M&Aで株式を譲渡すると猶予が打ち切られ、利子税を含め約1.5億円の即時納税が必要に。実質的な手取りは3.5億円となり、「本当にM&Aすべきか」と深く迷うことになりました。結局チャンスを見送ったE氏は「制度に縛られた」と語っています。

warning 注意:適用前に「後継者は10年以上、親族内で経営し続ける意志があるか」を必ず確認しましょう。M&Aの可能性が少しでもあるなら、慎重に検討が必要です。
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第8回:雇用維持要件の緩和を正しく理解する


「従業員が辞めたら納税しなければならないのか」という不安をよく聞きます。特例措置では雇用維持要件が緩和されており、5年間の平均雇用が8割を下回ったとしても、その理由を記載した報告書を提出し、専門家の確認を受ければ猶予は継続されます。かつての制度ほど「人の数」に縛られる必要はありません。ただし、報告義務自体を怠ると即座に打ち切りとなります。大切なのは、業績悪化などで雇用が守れなかった時こそ、誠実に手続きを行う事務管理能力を維持することです。

「従業員が辞めたら納税しなければならないのか」という不安をよく聞きます。特例措置では雇用維持要件が緩和されており、5年間の平均雇用が8割を下回ったとしても、その理由を記載した報告書を提出し、専門家の確認を受ければ猶予は継続されます。かつての制度ほど「人の数」に縛られる必要はありません。

ただし、報告義務自体を怠ると即座に打ち切りとなります。大切なのは、業績悪化などで雇用が守れなかった時こそ、誠実に手続きを行う事務管理能力を維持することです。

5年間の年次報告の仕組み

承継後5年間は毎年、都道府県に対して「年次報告書」を提出する義務があります。記載内容は①雇用人数、②後継者が引き続き代表者であること、③猶予対象株式を引き続き保有していることなどです。この報告書を税理士などの認定支援機関が確認します。5年経過後は3年に1度の継続届出書に切り替わります。

lightbulb ポイント:8割維持できなくても理由を報告すれば猶予継続可。ただし「誠実な手続き」を怠ると即打ち切り。毎年の年次報告を確実に実行する体制作りが最重要です。
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第9回 後継者の万が一、免除か一括納税か


特例措置の適用中、後継者に万が一があるとどうなるか。後継者が亡くなった場合、猶予税額は全額「免除」されます。一方、病気等で代表権を退くと原則「打ち切り」となり、利子税を含む多額の納税が必要です。ただし、重度障害等で経営不能と認められれば免除される救済もあります。


重要なのは「猶予は免除ではない」という点です。不測の事態による打ち切りリスクに備え、生命保険等での納税資金確保を含めたトータルな準備が不可欠。単なる節税策に留めず、経営継続のリスクヘッジまでしっかり見据えましょう。

特例措置の適用中、後継者に万が一があるとどうなるか。後継者が亡くなった場合、猶予税額は全額「免除」されます。一方、病気等で代表権を退くと原則「打ち切り」となり、利子税を含む多額の納税が必要です。ただし、重度障害等で経営不能と認められれば免除される救済もあります。

重要なのは「猶予は免除ではない」という点です。不測の事態による打ち切りリスクに備え、生命保険等での納税資金確保を含めたトータルな準備が不可欠。単なる節税策に留めず、経営継続のリスクヘッジまでしっかり見据えましょう。

後継者に万が一があった場合の整理

  • 後継者が死亡した場合 → 猶予税額は全額「免除」
  • 後継者が重度障害で経営不能と認定 → 猶予税額は「免除」
  • 後継者が病気・怪我で代表を退任 → 原則「打ち切り」(利子税も発生)
  • 後継者が自ら辞任した場合 → 「打ち切り」

【事例】代表退任で数千万円の納税が発生

特例措置を適用して7年が経過したF社の後継者が、過労から心臓疾患を患い入院。「代表を続けることが困難」として副社長に代表権を委ねた瞬間、打ち切り事由が発生。猶予税額1.8億円と7年分の利子税約900万円、合計約1.9億円の納税通知が届きました。準備していなかったF氏は銀行融資で乗り切りましたが、会社の財務体質は大きく悪化しました。

warning 備え:万一の打ち切りに備え、生命保険などで猶予税額相当の納税資金を別途確保しておくことを強く推奨します。「猶予=免除」ではないことを肝に銘じましょう。
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第10回:まとめ:新事業承継税制を使うべき会社


前編の最後に、本制度が向いている会社を整理します。株価が非常に高く、相続税負担がキャッシュフローを圧迫する会社、かつ後継者が明確で、今後10年以上は経営を継続する強い意志がある場合は、この制度は最強の武器になります。一方で、数年内のM&Aの可能性がある場合や、事務管理体制が脆弱な会社にはお勧めできません。メリットと制約を比較し、「後継者の未来の選択肢」を広げるための手段として活用するかを判断してください。次回の後編からは、この税制に頼らない対策を紹介します。

前編の最後に、本制度が向いている会社を整理します。株価が非常に高く、相続税負担がキャッシュフローを圧迫する会社、かつ後継者が明確で、今後10年以上は経営を継続する強い意志がある場合は、この制度は最強の武器になります。

一方で、数年内のM&Aの可能性がある場合や、事務管理体制が脆弱な会社にはお勧めできません。メリットと制約を比較し、「後継者の未来の選択肢」を広げるための手段として活用するかを判断してください。次回の後編からは、この税制に頼らない対策を紹介します。

判断チェックリスト:適用すべきか否か

最終的な判断は「後継者の将来」から逆算すること。税制を使う・使わないではなく、「後継者にとって最善の選択は何か」を軸に検討してください。適用後10年以上にわたる管理義務も含め、ご家族・後継者・専門家と一緒に十分な議論を重ねましょう。

✅ こんな会社に向いている

  • 株価が高く相続税負担が大きい
  • 後継者が明確・意志が固い
  • 10年以上の親族内承継を予定
  • 事務管理体制が整っている

❌ お勧めできない会社

  • 数年内にM&Aを検討中
  • 後継者の意志が不明確
  • 事務管理が苦手な体制
swap_horiz 後編へ続く
後編

新事業承継税制を使わない事業承継

第11回〜第30回 | 生命保険・信託・M&Aなど多彩な対策を解説

20記事
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第11回:あえて「新事業承継税制を使わない」という選択


新事業承継税制は強力ですが、あまりに厳しい制約が経営の自由を奪うこともあります。あえてこの制度を使わず、他の手法を組み合わせることで、柔軟かつ着実な承継を目指す経営者も増えています。税金の猶予という一点に目を奪われると、経営戦略や家族の調和という「事業承継の本質」を見失いかねません。後編では、生命保険、金庫株、信託、持株会社など、多様なツールを駆使した「縛られない承継」の具体策を詳しく見ていきましょう。

新事業承継税制は強力ですが、あまりに厳しい制約が経営の自由を奪うこともあります。あえてこの制度を使わず、他の手法を組み合わせることで、柔軟かつ着実な承継を目指す経営者も増えています。

税金の猶予という一点に目を奪われると、経営戦略や家族の調和という「事業承継の本質」を見失いかねません。後編では、生命保険、金庫株、信託、持株会社など、多様なツールを駆使した「縛られない承継」の具体策を詳しく見ていきましょう。

「制度を使わない」という選択が有効なケース

①将来のM&A可能性がゼロではない、②後継者の意志が必ずしも固くない、③株価が比較的低く税負担が許容範囲内、④事務管理が苦手で継続的な書類提出に不安がある、⑤複数の子どもへの公平な分配を優先したい。これらのケースでは、特例措置を使わない選択が賢明です。

lightbulb 視点転換:「税制ありき」ではなく「後継者・家族・経営の三位一体」を軸に考えることが本質。後編では後継者の選択肢を最大化する多様なツールを紹介します。
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第12回:暦年贈与の活用と税制改正の注意点


最も基本的な対策は、毎年少しずつ株式を贈与する「暦年贈与」です。時間をかけて株数を移転させることで、将来の相続財産を減らすことができます。ただし、2024年の税制改正により、相続開始前贈与の加算期間が「3年」から「7年」に延長された点に注意が必要です。早く始めるほど効果が高まるのが贈与の鉄則です。株価が一時的に下がったタイミングを見計らって一気に贈与するなど、計画的な実行が求められます。

最も基本的な対策は、毎年少しずつ株式を贈与する「暦年贈与」です。時間をかけて株数を移転させることで、将来の相続財産を減らすことができます。

ただし、2024年の税制改正により、相続開始前贈与の加算期間が「3年」から「7年」に延長された点に注意が必要です。早く始めるほど効果が高まるのが贈与の鉄則です。株価が一時的に下がったタイミングを見計らって一気に贈与するなど、計画的な実行が求められます。

暦年贈与の基本的な仕組み

暦年贈与は、1月1日〜12月31日の1年間に贈与を受けた財産が年間110万円以下であれば贈与税がかかりません。毎年110万円分の株式を後継者に贈与し続けることで、10年間で1,100万円分の財産を非課税で移転できます。ただし、相続開始前7年以内の贈与財産は相続税の計算に加算される(2024年改正後)ため、なるべく早く、若い世代に贈与を開始することが重要です。

【事例】株価低下のタイミングを活用

コロナ禍で業績が一時的に落ち込んだG社の株価は、通常の2億円から5,000万円程度まで下落。この機を逃さず、後継者の長男に一気に全株を贈与した結果、贈与税は通常の試算の約3分の1で済みました。「株価が下がったとき」こそ贈与の絶好のタイミングです。

warning 改正注意:2024年改正で加算期間が3年→7年へ拡大。60歳以上の経営者はすぐに専門家と開始時期を相談してください。早期着手が節税効果を最大化する鍵です。
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第13回:相続時精算課税制度の新たな活用法


相続時精算課税制度は、贈与時の評価額で相続税を計算できる仕組みです。かつては一度選ぶと暦年贈与に戻れないデメリットがありましたが、現在は年110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が向上しました。将来、株価が大きく上昇することが見込まれる優良企業の場合、今の低い評価額で課税対象を「ロック」できるこの制度は非常に有効です。新事業承継税制のような厳しい継続要件がないため、柔軟な経営判断を維持したい企業に適しています。

相続時精算課税制度は、贈与時の評価額で相続税を計算できる仕組みです。かつては一度選ぶと暦年贈与に戻れないデメリットがありましたが、現在は年110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が向上しました。

将来、株価が大きく上昇することが見込まれる優良企業の場合、今の低い評価額で課税対象を「ロック」できるこの制度は非常に有効です。新事業承継税制のような厳しい継続要件がないため、柔軟な経営判断を維持したい企業に適しています。

相続時精算課税の仕組み(2024年改正後)

60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用可能。累計2,500万円まで贈与税がかからず、相続時に相続財産に加算して精算します。2024年から年110万円の基礎控除が新設され、この110万円分は相続時も加算不要です。つまり毎年110万円は完全に非課税で移転可能となりました。

【事例】将来の株価上昇分を先に確定

現在の株価が1株1万円のH社。今後5年で3万円に上昇する見込みです。今すぐ精算課税で1,000株(1,000万円)を後継者に贈与すれば、将来株価が3倍になっても相続時には「1,000万円」として計算されます。もし贈与せずに相続時に受け取れば「3,000万円」として課税。この差2,000万円分の節税効果が生まれます。

lightbulb 活用法:今の株価が低い優良企業ほど効果大。2024年改正で年110万円の非課税枠が追加され、使い勝手が格段に向上しました。
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第14回:生命保険の活用1:納税資金の確保


自社株の評価が高いと、相続税は多額になりますが、株式自体は現金化できません。この「納税資金の不足」を解決するのが生命保険です。経営者に万一のことがあった際、後継者を受取人にしておけば、即座に現金を手にすることができ、納税期限に間に合わせることが可能です。生命保険金には「500万円 × 法定相続人数」の非課税枠もあり、現預金で持つよりも節税効果が得られます。

自社株の評価が高いと、相続税は多額になりますが、株式自体は現金化できません。この「納税資金の不足」を解決するのが生命保険です。経営者に万一のことがあった際、後継者を受取人にしておけば、即座に現金を手にすることができ、納税期限に間に合わせることが可能です。

生命保険金には「500万円 × 法定相続人数」の非課税枠もあり、現預金で持つよりも節税効果が得られます。

相続税の申告・納税期限は「10か月」

相続税の申告・納税期限は相続開始(経営者の死亡)から10か月以内。現金がなければ延納(分割払い)や物納(財産で納税)も可能ですが、手続きが複雑で、最終的には会社株式の一部を売却せざるを得ないケースもあります。保険で事前に現金を準備しておくことが、最もシンプルで確実な対策です。

【試算例】生命保険の非課税メリット

法定相続人3名の場合、生命保険金の非課税枠は「500万円×3名=1,500万円」。この1,500万円は相続税の計算対象から除かれます。仮に相続税率40%とすれば、単純計算で600万円の節税効果。さらに経営者が亡くなった翌日に保険金を受け取れる「即効性」も大きな強みです。

lightbulb ポイント:非課税枠(500万円×法定相続人数)を活用することで、現預金より有利に資金を準備できます。保険は「相続税の申告期限(10か月)」に間に合わせるための最強ツールです。
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第15回:生命保険の活用2:遺留分・代償金対策


後継者に株式を集中させると、他の相続人(兄弟など)の「遺留分」を侵害してしまうリスクがあります。遺留分侵害額請求をされると、後継者は金銭で解決しなければなりません。この際、生命保険金を「代償金」の原資として準備しておくことで、会社の支配権を維持しつつ、円満な遺産分割を実現できます。争族(争い)を防ぐための「出口戦略」として、保険は極めて実務的なツールです。

後継者に株式を集中させると、他の相続人(兄弟など)の「遺留分」を侵害してしまうリスクがあります。遺留分侵害額請求をされると、後継者は金銭で解決しなければなりません。

この際、生命保険金を「代償金」の原資として準備しておくことで、会社の支配権を維持しつつ、円満な遺産分割を実現できます。争族(争い)を防ぐための「出口戦略」として、保険は極めて実務的なツールです。

遺留分とは何か

遺留分とは、法定相続人が最低限受け取る権利がある財産の割合です。子が相続人の場合、法定相続分の1/2が遺留分です。例えば、遺産総額4億円(自社株3億円+現金1億円)で子が2人の場合、各子の法定相続分は2億円、遺留分は1億円。後継者の長男に全財産を遺せば、次男は最大1億円の遺留分侵害額請求ができます。

【事例】保険で争族を回避

I社長は長男(後継者)に自社株3億円を遺す遺言を残しました。次男への遺留分は約5,000万円の見込み。I社長は生命保険金5,000万円の受取人を長男に指定しておき、「保険金を次男への代償金に充ててほしい」と遺言に明記。I社長死亡後、長男は保険金で次男に5,000万円を支払い、会社の株式は1株も手放さずに済みました。

lightbulb 戦略:後継者に株式を集中 → 他の相続人への代償金を保険金で賄う。これが「争族対策」の王道。事前の家族会議と遺言書の作成もセットで行いましょう。
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第16回:生命保険の活用3:株価の引き下げ(純資産圧縮)


生命保険料の支払いは、帳簿上の利益を圧縮したり、純資産額を減らしたりする効果があります。これにより、自社株式の評価額(類似業種比準価額や純資産価額)を引き下げることが可能です。贈与を行う直前に保険加入や保険料の支払いを行うことで、より低い税負担で株式を移転させる「株価対策」としての活用です。ただし、解約返戻金のピーク時期や税務上の損金算入割合を精査し、計画的に行う必要があります。

生命保険料の支払いは、帳簿上の利益を圧縮したり、純資産額を減らしたりする効果があります。これにより、自社株式の評価額(類似業種比準価額や純資産価額)を引き下げることが可能です。

贈与を行う直前に保険加入や保険料の支払いを行うことで、より低い税負担で株式を移転させる「株価対策」としての活用です。ただし、解約返戻金のピーク時期や税務上の損金算入割合を精査し、計画的に行う必要があります。

純資産価額方式と保険の関係

非上場株式の評価方法の一つ「純資産価額方式」では、会社の純資産(資産-負債)をベースに株価を計算します。生命保険料の支払いは「前払保険料」として資産計上されつつも、損金算入できる分だけ利益が減り、純資産を圧縮します。保険加入による株価引き下げは、贈与や相続のタイミングを2〜3年見据えて計画的に実行することが重要です。

注意点:税制改正への対応

2019年の税制改正により、法人の保険料の損金算入ルールが変更されました。保険の目的が純粋な保障でなく「節税目的」とみなされる場合、税務署から否認されるリスクもあります。必ず税理士と連携し、適正な保険設計を行うことが重要です。

lightbulb 実務:保険料支払い→純資産圧縮→株価低下→低い株価で贈与、という時間軸を設計することが重要。単なる節税目的の保険は税務リスクがあるため、専門家と慎重に設計しましょう。
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第17回:役員退職金の活用によるダブル効果


先代経営者の引退時に支払う「役員退職金」は、事業承継における強力な対策ツールです。多額の退職金を支払うことで、会社の純資産を減らし、株価を劇的に下げることができます。この株価が下がったタイミングで後継者に贈与を行うのが王道のスキームです。また、退職金を受け取る先代にとっては、老後資金の確保になると同時に、受け取り時の税制優遇(退職所得控除)も受けられるという、一石二鳥の効果があります。

先代経営者の引退時に支払う「役員退職金」は、事業承継における強力な対策ツールです。多額の退職金を支払うことで、会社の純資産を減らし、株価を劇的に下げることができます。この株価が下がったタイミングで後継者に贈与を行うのが王道のスキームです。

また、退職金を受け取る先代にとっては、老後資金の確保になると同時に、受け取り時の税制優遇(退職所得控除)も受けられるという、一石二鳥の効果があります。

退職所得の税制優遇とは

役員退職金は「退職所得」として分離課税され、給与所得より大幅に税負担が軽くなります。計算式は「(退職金 − 退職所得控除額) × 1/2 × 税率」。退職所得控除は勤続20年超で「800万円 + 70万円×(勤続年数−20年)」。例えば勤続35年の社長が5,000万円の退職金を受け取る場合、控除額は2,850万円。課税対象は約1,075万円で、税率は所得により20〜30%程度に抑えられます。

【試算例】退職金による株価引き下げ効果

純資産5億円のJ社が社長に3億円の退職金を支払うと、純資産は2億円に急落。株価は60%も下落します。このタイミングで後継者へ贈与すれば、贈与税の計算ベースが大幅に下がります。退職金に使う原資は会社の内部留保が一般的ですが、生命保険の解約返戻金を活用する方法もあります。

lightbulb スキーム:①退職金支払い→②株価急落→③低い株価で後継者に贈与。先代の老後資金確保と株価引き下げを同時に実現する最強の王道スキームです。
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第18回:金庫株(自社株買い)による納税資金作り


相続した株式を会社に買い取ってもらう「金庫株」も有効です。後継者が相続税を支払うために、相続した株式の一部を会社に売り、その代金を納税に充てる方法です。通常、会社への譲渡は「みなし配当」として高い税率が課されますが、相続後一定期間内であれば、譲渡所得として分離課税(約20%)で済む特例があります。ただし、会社側に買い取り資金(剰余金)があることが条件となります。

相続した株式を会社に買い取ってもらう「金庫株」も有効です。後継者が相続税を支払うために、相続した株式の一部を会社に売り、その代金を納税に充てる方法です。

通常、会社への譲渡は「みなし配当」として高い税率が課されますが、相続後一定期間内であれば、譲渡所得として分離課税(約20%)で済む特例があります。ただし、会社側に買い取り資金(剰余金)があることが条件となります。

通常の株式会社への譲渡との税率の差

通常、個人が会社に株式を譲渡すると「みなし配当」が発生し、最大55%の税率がかかります。しかし「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例」を使えば、相続税申告期限後3年以内に限り、20.315%の譲渡所得課税で済みます。税率差は約35%。この特例は「金庫株特例」と呼ばれ、相続税の納税資金確保に極めて有効です。

【事例】金庫株で相続税を乗り切る

K氏は相続で自社株2億円と相続税4,000万円を引き継ぎました。手元に現金がなかったため、金庫株特例を活用し、自社株の一部(4,000万円相当)を会社に売却。売却益への税金は20.315%(約800万円)で済み、残った3,200万円で相続税を支払いました。通常のみなし配当課税だと約2,200万円の税金が発生するため、1,400万円の節税効果がありました。

lightbulb 条件:相続税申告期限(10か月)後3年以内の申請が必要。会社の余剰金(分配可能額)の事前確認と、会社側の財務体力の準備が必須です。
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第19回:民法特例1:「除外合意」で遺留分を封じる


「経営承継円滑化法」に基づく民法特例の「除外合意」は、親族内承継の強い味方です。後継者が贈与を受けた株式を、他の相続人の遺留分算定の基礎から「除外」することができます。これにより、将来どんなに会社が成長して株価が上がっても、他の兄弟から遺留分を請求される心配がなくなります。推定相続人全員の合意と家庭裁判所の許可が必要ですが、争族の芽を事前に摘む最も確実な手法の一つです。

「経営承継円滑化法」に基づく民法特例の「除外合意」は、親族内承継の強い味方です。後継者が贈与を受けた株式を、他の相続人の遺留分算定の基礎から「除外」することができます。

これにより、将来どんなに会社が成長して株価が上がっても、他の兄弟から遺留分を請求される心配がなくなります。推定相続人全員の合意と家庭裁判所の許可が必要ですが、争族の芽を事前に摘む最も確実な手法の一つです。

除外合意の手続きの流れ

①経営者・後継者・推定相続人全員で合意書を作成 → ②弁護士・司法書士の確認 → ③家庭裁判所への許可申立 → ④家庭裁判所の許可。全員の同意が必要であり、一人でも反対すると成立しません。そのため、経営者が元気なうちに家族全員で「会社の未来」について話し合う場を持つことが大切です。

【事例】10年後の株価上昇から後継者を守る

L社長は長男に自社株を贈与する際、除外合意を締結しました。当時の株価は1億円。その後、長男が経営努力で会社を成長させ、10年後に株価は5億円に。もし除外合意がなければ次男・三男から計約1.3億円の遺留分請求が来る可能性がありました。除外合意のおかげで長男は会社の成長分を守り抜くことができました。

lightbulb 効果:後継者が会社を成長させても、遺留分を請求される心配がなくなります。家族全員の合意形成が必要なため、早めの家族会議が不可欠です。
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第20回:民法特例2:「固定合意」による株価上昇対策


除外合意と並んで重要なのが「固定合意」です。贈与された株式の価格を、合意時点の評価額で「固定」して遺留分を計算する仕組みです。通常、遺留分は「相続時の時価」で計算されるため、後継者が努力して株価を上げるほど、将来支払うべき遺留分額も増えてしまうという矛盾が生じます。固定合意を使えば、後継者は自分の努力による成長分を自分だけのものにでき、安心して経営に専念できます。

除外合意と並んで重要なのが「固定合意」です。贈与された株式の価格を、合意時点の評価額で「固定」して遺留分を計算する仕組みです。

通常、遺留分は「相続時の時価」で計算されるため、後継者が努力して株価を上げるほど、将来支払うべき遺留分額も増えてしまうという矛盾が生じます。固定合意を使えば、後継者は自分の努力による成長分を自分だけのものにでき、安心して経営に専念できます。

除外合意と固定合意の使い分け

「除外合意」は株式を遺留分の計算から完全に取り除くため、後継者にとってより強力な保護になります。一方「固定合意」は株式の評価額を合意時点で固定するため、遺留分の計算は残りますが、後継者の経営努力による成長分は保護されます。後継者の状況と他の相続人との関係性を考慮して、どちらを使うか、または両方を組み合わせるかを選択します。

lightbulb 使い分け:除外合意=遺留分計算から完全排除。固定合意=合意時の評価額で計算を固定。後継者の保護を最大化するには、二つを組み合わせることも有効です。
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第21回:種類株式の活用1:議決権制限株式


株式の「所有」と「経営」を切り離すために、種類株式を活用する手法があります。例えば、後継者以外の兄弟には「無議決権株式(配当優先)」を渡し、経営に携わる後継者には通常の議決権付き株式を集中させます。これにより、資産としての公平性を保ちつつ、経営の安定性を確保することが可能です。配当を厚くすることで、経営権を持たない相続人の不満を抑える工夫も実務でよく行われます。

株式の「所有」と「経営」を切り離すために、種類株式を活用する手法があります。例えば、後継者以外の兄弟には「無議決権株式(配当優先)」を渡し、経営に携わる後継者には通常の議決権付き株式を集中させます。

これにより、資産としての公平性を保ちつつ、経営の安定性を確保することが可能です。配当を厚くすることで、経営権を持たない相続人の不満を抑える工夫も実務でよく行われます。

種類株式の設計例

例:発行済株式1,000株を後継者の長男600株(議決権あり)、次男200株・長女200株(無議決権・配当優先)に分配。長男が議決権の過半数を持つため、株主総会の決議は長男が主導できます。次男・長女は経営に関与しませんが、会社の利益分配(配当)を多めに受け取ることで納得感を得られます。

【事例】種類株式で家族の公平感と経営安定を両立

M社長は3人の子どもに株式を分ける際、後継者の長男にのみ議決権株式を集中させ、他の2人には配当優先・無議決権株式を渡しました。次男と長女は「自分たちも会社の恩恵を受けられる」と納得し、争族を回避。後継者の長男は安定した経営権を持ちながら、兄弟と良好な関係を保てています。

lightbulb 設計例:後継者→議決権株式、他の兄弟→配当優先・無議決権株式。「経営権」と「財産権」を分離することが、全員が納得できる争族防止の鍵です。
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第22回:種類株式の活用2:黄金株(拒否権付株式)


先代経営者が引退後も一定の影響力を残したい場合、「黄金株(拒否権付株式)」の発行が検討されます。株数は1株であっても、株主総会の重要決議(合併や役員の選任など)を拒否できる権利を持たせた株式です。後継者がまだ若く、暴走が懸念される場合に、先代が最後の「ブレーキ役」として保有し続けます。贈与税を抑えつつ、適切なタイミングで完全な経営権を委譲するためのステップとして活用されます。

先代経営者が引退後も一定の影響力を残したい場合、「黄金株(拒否権付株式)」の発行が検討されます。株数は1株であっても、株主総会の重要決議(合併や役員の選任など)を拒否できる権利を持たせた株式です。

後継者がまだ若く、暴走が懸念される場合に、先代が最後の「ブレーキ役」として保有し続けます。贈与税を抑えつつ、適切なタイミングで完全な経営権を委譲するためのステップとして活用されます。

黄金株が有効なシーン

①後継者がまだ経験不足で重要な意思決定に不安がある、②大規模な設備投資や事業譲渡の判断に先代の関与が必要、③複数の後継候補がいて派閥争いが懸念される、などの場面で黄金株は有効です。ただし、永続的に保有すると経営の自由度を損なうため、「後継者が経営に自信を持てた時点で返上する」という出口の計画も事前に設計しておきましょう。

黄金株と信託の組み合わせ

黄金株保有者(先代)が認知症になると、拒否権の行使が困難になり経営が停滞するリスクがあります。これを防ぐため、黄金株を家族信託の信託財産として設定し、受託者(後継者など)が拒否権行使の判断をできるよう設計することで、認知症リスクにも対応できます。

lightbulb 注意:黄金株保有者が認知症等になると経営が止まるリスクがあります。信託との組み合わせで「認知症リスク」にも備えた設計をしましょう。
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第23回:持株会社(ホールディングス)化による集約


複数の会社を経営している場合や、株主が分散している場合は、持株会社(資産管理会社)の設立が有効です。個人で保有していた株式を持株会社に移転させることで、株主を法人に一本化し、権利の分散を防ぎます。また、持株会社化の過程で組織再編税制などを活用し、株価の評価を引き下げる手法もあります。将来の再承継を見据えた「守りの体制」を築くための高度な戦略です。

複数の会社を経営している場合や、株主が分散している場合は、持株会社(資産管理会社)の設立が有効です。個人で保有していた株式を持株会社に移転させることで、株主を法人に一本化し、権利の分散を防ぎます。

また、持株会社化の過程で組織再編税制などを活用し、株価の評価を引き下げる手法もあります。将来の再承継を見据えた「守りの体制」を築くための高度な戦略です。

持株会社化の基本スキーム

経営者が新たに持株会社(HD)を設立し、自身が保有する事業会社の株式をHDに移転します(株式交換・株式移転などを活用)。これにより「個人→HD→事業会社」という構造が生まれます。次の承継では、個人がHDの株式を後継者に渡すだけで、事業会社の支配権が移転します。再承継のたびに評価が高くなる事業会社株の直接承継を避けられるため、長期的な節税効果があります。

【事例】子会社3社を持株会社で一本化

N社長は3つの子会社(製造・販売・不動産)を個別に保有していましたが、株主の分散が問題でした。持株会社を設立して全株式を移転。株主はNHD(持株会社)一社のみに集約され、後継者への承継はNHDの株式を渡すだけで完結するようになりました。また、3社の株主総会を一元管理できるようになり、経営効率も向上しました。

lightbulb メリット:①株主の一本化②株価引き下げ③再承継コスト低減④グループ経営の効率化。長期的な「守りの体制」構築に有効です。
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第24回:持株会社による株価上昇の抑制


持株会社を設立すると、子会社からの配当や経営指導料が持株会社に蓄積されます。株式の評価において、個人が直接子会社株を持つよりも、持株会社を介した方が、評価額の増大を緩やかにできるケースがあります(法人の含み益に対する法人税等相当額の控除など)。長期的に利益が出続ける優良企業であれば、持株会社という「クッション」を置くことで、次世代への承継コストを抑え続けることが可能です。

持株会社を設立すると、子会社からの配当や経営指導料が持株会社に蓄積されます。株式の評価において、個人が直接子会社株を持つよりも、持株会社を介した方が、評価額の増大を緩やかにできるケースがあります(法人の含み益に対する法人税等相当額の控除など)。

長期的に利益が出続ける優良企業であれば、持株会社という「クッション」を置くことで、次世代への承継コストを抑え続けることが可能です。

法人税等相当額控除の仕組み

純資産価額方式で持株会社の株価を評価する際、持株会社が保有する子会社株式の含み益(評価差額)に対して、37%の法人税等相当額を控除できます。例えば、子会社株式の含み益が1億円なら3,700万円を控除し、6,300万円が評価対象となります。個人が直接保有する場合は含み益の全額が評価対象となるため、持株会社経由の方が株価を低く抑えられます。

経営指導料活用による利益分散

持株会社が子会社から「経営指導料」を受け取ることで、子会社の利益(=株価上昇の源泉)を持株会社に吸い上げ、子会社の株価上昇を抑制できます。持株会社自体も利益が蓄積しますが、その利益は持株会社の株価評価に含まれます。長期的な視点でバランスを設計することが重要です。

lightbulb 仕組み:持株会社の株価評価では「法人税等相当額(37%)の控除」が適用され、直接保有より評価額が低くなります。優良企業ほど長期的な節税効果が大きくなります。
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第25回:家族信託の活用と認知症リスクへの備え


近年注目されているのが「家族信託」です。経営者が認知症などで判断能力を失うと、議決権が行使できなくなり、会社経営が止まってしまう「認知症リスク」があります。信託を使えば、形式的な所有権は経営者に残したまま、議決権の行使をあらかじめ指定した後継者に託すことができます。税制面での対策だけでなく、経営の継続性を法的に担保する「BCP(事業継続計画)」としての側面が強い手法です。

近年注目されているのが「家族信託」です。経営者が認知症などで判断能力を失うと、議決権が行使できなくなり、会社経営が止まってしまう「認知症リスク」があります。

信託を使えば、形式的な所有権は経営者に残したまま、議決権の行使をあらかじめ指定した後継者に託すことができます。税制面での対策だけでなく、経営の継続性を法的に担保する「BCP(事業継続計画)」としての側面が強い手法です。

認知症になると何が起きるか

経営者が認知症になっても、株主名簿上の株主は経営者のまま。誰も代わりに議決権を行使できないため、役員選任・重要事項の決議が止まります。成年後見制度を使えば後見人が議決権を行使できますが、後見人は「本人の財産保護」が目的のため、会社に不利な決議(役員報酬の増額など)には協力しません。家族信託なら信頼できる後継者に議決権を委ねられます。

【事例】家族信託で経営危機を回避

O社長(72歳)は2年前に家族信託を設定し、自社株の議決権行使を長男(後継者)に委ねました。昨年O社長は軽度認知症と診断されましたが、会社の経営は一切止まらず、長男が株主総会を滞りなく運営。未対応だった場合を想定すると「経営が6か月以上ストップし、主要取引先との契約が解除される恐れがあった」と振り返っています。

lightbulb BCP視点:65歳以上の認知症有病率は約15%、75歳以上では約30%。「万が一」ではなく「いつか来る」前提で、元気なうちに家族信託を設計しておきましょう。
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第26回:不動産活用による株価評価の引き下げ


会社の余剰資金で不動産を購入し、自社で活用したり賃貸したりすることで、株価を下げることが可能です。非上場株式の評価(純資産価額方式)において、不動産は時価よりも低い相続税評価額で計上されるため、現預金で持っているよりも株式価値を圧縮できます。ただし、購入後3年以内の不動産は「通常の取引価格」で評価されるなどの制限があるため、早めの着手が必要です。

会社の余剰資金で不動産を購入し、自社で活用したり賃貸したりすることで、株価を下げることが可能です。非上場株式の評価(純資産価額方式)において、不動産は時価よりも低い相続税評価額で計上されるため、現預金で持っているよりも株式価値を圧縮できます。

ただし、購入後3年以内の不動産は「通常の取引価格」で評価されるなどの制限があるため、早めの着手が必要です。

不動産の相続税評価額と時価の差

一般的に、土地の相続税評価額(路線価)は時価の約80%、建物の固定資産税評価額は時価の約60%とされています。例えば、時価1億円の土地・建物を購入した場合、帳簿上の資産はほぼ1億円ですが、相続税評価額は約7,000〜8,000万円程度。現預金で1億円持っているより、不動産で持った方が評価額が低くなるため、株価を圧縮できます。

注意:行き過ぎた節税への規制強化

近年、明らかに節税目的の不動産購入に対して、税務署が「時価評価」を適用する判決が相次いでいます(最高裁2022年判決など)。過度な節税目的の不動産購入は否認リスクがあるため、事業上の必要性を明確にした上で、税理士と慎重に計画を立てることが必要です。

warning 注意:購入後3年以内は通常の取引価格で評価されます。贈与のタイミングを逆算した3年以上前の取得が必要。また、節税目的が明確な不動産購入は税務否認リスクがあります。
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第27回:第三者承継(M&A)という前向きな選択


親族や従業員に適任者がいない場合、M&Aは廃業を避けるための極めて前向きな選択肢です。資料によれば、全国の3社に2社が後継者不在であり、黒字廃業も増えています。M&Aによって大手グループの傘下に入れば、従業員の雇用を守りつつ、経営者は売却益を得てハッピーリタイアを実現できます。最近は数億円規模の中小M&Aも活発化しており、検討のハードルは下がっています。

親族や従業員に適任者がいない場合、M&Aは廃業を避けるための極めて前向きな選択肢です。全国の3社に2社が後継者不在であり、黒字廃業も増えています。M&Aによって大手グループの傘下に入れば、従業員の雇用を守りつつ、経営者は売却益を得てハッピーリタイアを実現できます。

最近は数億円規模の中小M&Aも活発化しており、検討のハードルは下がっています。

M&Aで得られるもの

①経営者の老後資金確保(売却益)、②従業員の雇用継続(大手グループ入りによる安定)、③技術・ノウハウの継承(廃業による消滅を防ぐ)、④買い手企業とのシナジーによる事業成長。M&Aは「会社を手放す」ではなく「会社を守る」選択です。近年は事業引継ぎ支援センターや各種M&Aマッチングサービスが充実し、1〜3億円規模のM&Aも珍しくなくなりました。

【事例】M&Aで従業員を守り、経営者も豊かに

後継者がいなかったP社長(68歳)は廃業を考えていましたが、専門家の勧めでM&Aを検討。業界大手に3億円で売却し、全従業員45名の雇用が維持されました。P社長は「会社が続く喜びと、老後の安心を同時に得られた」と語っています。売却後も技術顧問として1年間残り、円滑に引き継ぎを完了しました。

lightbulb 発想転換:M&Aは「会社を手放すこと」ではなく「会社と従業員の未来を守ること」。廃業による技術・雇用の消滅より、はるかに前向きな選択です。
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第28回:従業員承継(MBO)と資金調達


親族以外でも、長年会社を支えてきた役員や従業員に継がせる「MBO(マネジメント・バイアウト)」という手法があります。後継者に株式を買い取る資金がない場合、政府系金融機関の融資制度や、「経営資源集約化税制」などの優遇措置を活用できる場合があります。個人保証の引き継ぎなど課題は多いですが、経営理念を最も理解している人物への承継は、取引先や金融機関からの信頼も得やすい選択です。

親族以外でも、長年会社を支えてきた役員や従業員に継がせる「MBO(マネジメント・バイアウト)」という手法があります。後継者に株式を買い取る資金がない場合、政府系金融機関の融資制度や、「経営資源集約化税制」などの優遇措置を活用できる場合があります。

個人保証の引き継ぎなど課題は多いですが、経営理念を最も理解している人物への承継は、取引先や金融機関からの信頼も得やすい選択です。

MBOの資金調達方法

内部昇格の後継者は「株式購入資金がない」ことが最大のハードルです。主な資金調達手段は①日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」(無担保・低利・長期)、②民間銀行の事業承継融資、③会社の余剰金を活用した分割払い(株式の分割取得)、④種類株式・信託を活用した段階的移転などです。一度に全株を取得しなくても、数年かけて段階的に移転する方法も有効です。

個人保証(経営者保証)の引き継ぎ問題

多くの中小企業では、経営者が会社の借入金に対して個人保証をしています。後継者が引き継ぐ際、この個人保証の引き継ぎを求められるケースがあります。2023年から「経営者保証に関するガイドライン」が強化され、金融機関は個人保証の見直しを求められていますが、実務ではまだ課題が残ります。承継前に金融機関と保証条件の見直しを交渉することも重要です。

lightbulb 資金調達:日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」が活用可能。無担保・低利での融資も。後継者と一緒に金融機関・専門家に相談しましょう。
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第29回:事業承継の「見える化」と10カ年カレンダー


どんな対策を講じるにせよ、最も大切なのは現状の「見える化」です。資料では「事業承継10カ年カレンダー」の作成が推奨されています。経営者と後継者の年齢を軸に、いつ引退し、いつ株式を移し、いつ教育を終えるか。これらを文書化し、数値化することで、不発弾のような問題を抱えた承継を防げます。対策を「いつか」ではなく「今」の行動計画に落とし込むことが、成功への絶対条件です。

どんな対策を講じるにせよ、最も大切なのは現状の「見える化」です。「事業承継10カ年カレンダー」の作成が推奨されています。経営者と後継者の年齢を軸に、いつ引退し、いつ株式を移し、いつ教育を終えるか。これらを文書化し、数値化することで、不発弾のような問題を抱えた承継を防げます。

対策を「いつか」ではなく「今」の行動計画に落とし込むことが、成功への絶対条件です。

10カ年カレンダーに書き込む項目

①経営者と後継者の年齢推移、②株式移転の時期・方法・規模、③後継者教育の節目(経営会議参加・部門責任者就任・役員就任など)、④各種申請・届出の期限(特例承継計画・年次報告など)、⑤引退後の生活設計(資産・年金・趣味)、⑥遺言書作成・更新のタイミング。これらを年表形式で一覧化することで、「今何をすべきか」が明確になります。

【事例】カレンダーで発見した「抜け漏れ」

Q社長が10カ年カレンダーを専門家と一緒に作成したところ、「65歳で退職金を受け取ろうとしていたが、その時点では後継者がまだ管理職になったばかりで代表就任は無理」という矛盾を発見。計画を3年前倒しにして後継者の育成を加速させ、無理のない承継スケジュールに修正できました。

lightbulb 今すぐ実践:経営者と後継者の年齢を書き出し、「10年後に何歳か」「その時何をしているか」を確認することから始めましょう。矛盾や抜け漏れが見えてきます。
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第30回:総括:自社に最適な「オーダーメイド」の承継を


30回にわたり事業承継対策を見てきましたが、唯一無二の正解はありません。新事業承継税制が合う会社もあれば、生命保険や信託の組み合わせが最適な会社もあります。大切なのは、税金という「点」ではなく、経営・家族・資産の「三位一体」でトータルプランを立てることです。信頼できる税理士などの専門家と、後継者を交えた開かれた対話から、あなたの会社の「最高のバトンタッチ」を始めましょう。

30回にわたり事業承継対策を見てきましたが、唯一無二の正解はありません。新事業承継税制が合う会社もあれば、生命保険や信託の組み合わせが最適な会社もあります。

大切なのは、税金という「点」ではなく、経営・家族・資産の「三位一体」でトータルプランを立てることです。信頼できる税理士などの専門家と、後継者を交えた開かれた対話から、あなたの会社の「最高のバトンタッチ」を始めましょう。

自社に合った対策を選ぶ判断軸

①株価が高く後継者の意志が固い → 新事業承継税制の検討を最優先。②株価を事前に下げたい → 役員退職金・生命保険・不動産を組み合わせる。③兄弟間の公平性が重要 → 種類株式・民法特例・生命保険(代償金)を活用。④M&Aの可能性を残したい → 特例措置は使わず、暦年贈与・精算課税を活用。⑤認知症リスクが心配 → 家族信託を早期に設計。⑥後継者がいない → M&A・MBOの検討を今すぐ開始。

「始めること」が最大の対策

本連載を読み終えた今、最も重要なのは「行動を始めること」です。事業承継の問題は先延ばしにすればするほど、選択肢が狭まり、コストが増加します。今日から専門家との対話を始め、10カ年カレンダーを作成し、家族との話し合いの場を設けましょう。あなたの会社の「継栄」は、今日の一歩から始まります。

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全30回の連載、お読みいただきありがとうございました。

連載を通じて得た知識を、ぜひ「行動」に変えてください。信頼できる税理士・専門家と一緒に、あなたの会社だけの「オーダーメイドの承継プラン」を描きましょう。

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